2000年代の初め頃から、多くの外国人技能実習生を見かけるようになりました。
希望を抱いて日本に来た実習生たちを待っていたのは、過酷な労働条件や人権侵害。
私たちは、年間130件あまりの相談を受け救援活動を行っています。
おもな相談内容
・賃金不払い
・労働災害(労災)
・解雇
・パワハラ
・人権侵害
・強制帰国
相談者の地域・国籍
アジア各国を中心に日本全国から
※技能実習制度とは、、、技能実習制度とは、「開発途上地域等へ技能移転を図り、その経済発展を担う人材作りに協力すること」を本来目的として創設された制度です。
しかし、この制度を本来の趣旨とは違い、単に安価な労働力としての目的で利用し、時間外労働(残業代)はもちろん最低賃金すら払わずに長時間働かせる(もっとひどい場合は安全措置をとらずに危険な仕事に従事させたり、社会保険も未払いで負傷した際に保険がない事が発覚するなど)悪質な経営者が後を絶たないのが現状です。
※最低賃金などは県ごとに定められた日本人の労働者と同じである事になっていますが、社員寮費などを名目とした天引きなどで法律をかいくぐるような行為もあります。
※もちろん、すべての送り出し機関、監理団体、受け入れ先(技能実習生を受け入れる経営者等)が悪質と言うわけではありません。ルールを守り、実習生の方々を大切にしている機関もあります。
そして、この問題は、単に、日本の経営者だけでなく、日本で監督する立場である監理団体、そして海外の送り出し機関も一緒になって、搾取に加担している事例もあります。
実習生たちは、日本で稼げるという現地送り出し機関が宣伝する甘い言葉を信じて、親類や消費者金融などから多くの借金をして、送り出し機関の運営する日本語学校に高額な費用を払って入学し、来日するわけです。しかし、来日前に聞いた宣伝文句ほど日本で稼げるわけではなく、日本で搾取される以前に母国でも借金で縛られているという実情があります。また、技能実習からの帰国者も、実情を話さず、故郷で見栄を張るのが常ですから、悪循環が形成されます。
日本で稼げないとなると、母国での借金の他、家族親類の一族の過剰な期待、出身の村の人たちへの見栄など※の何重もの鎖に縛られているため帰国の道を選ぶこともままならず、実習先をやめる事は事実上帰国もしくは強制送還となりますので、こういった精神的な弱みに付け込まれ奴隷のように扱われても言いなりになるしかない現状があります。
ならば転職(実習先の変更)すればいいじゃないかと思われるかもしれませんが、これも、単に新たな実習先確保だけでなく、入管などで複雑で煩雑な手続きが必要で、日本人の転職とはわけが違い、彼らが自ら手続きすることは事実上無理です。
このような状況下で、一部は、同郷の外国人の手引きなどで、失踪して不法滞在・不法就労化したり、犯罪に手を染めたりするパターンもあります。
ただ同郷の外国人が「もっと良い仕事がある」と、そそのかして不法就労へと導いても、環境が改善されるわけでもなく、更に同郷の外国人からも搾取される事すらあります。
もちろん、理由はどうであれ犯罪に手を染める事は、外国人の身勝手な行為であって許されるものではありません。
こういった外国人の技能実習に関する闇は深く、決して一枚岩ではなく、その裏には、深刻な事情があるケースが隠れています。
※私たちから見ると、近所への体裁や家族の仕送り心など「なんだそれ、そんな事気にしている状況か?」と思ったり呆れるかもしれませんが、そもそも日本人と彼らの価値観や恥の概念に大きな違いがあり、途上国では昔の日本のように近所付き合いは、より密接で村社会です。そうなると母国に帰った後に大恥をかいたり村八分になったりすることは死活問題です。また借金も、法的制度が違うため、日本の自己破産のようなものが適用できなかったり、親類や村からの個人的借金であるなどで、逃げられないことが多いのです。
※母国での借金の問題については、入管でも従来から問題視しており、来日前の在留資格認定証明書の申請段階で、技能実習候補生から、書面で現地送り出し機関や日本語学校に払った費用や借金の有無などを自己申告するようになっています。しかし、実情は送り出し機関の言うとおりに記載するのが常です。周りから借金して送り出し機関の日本語学校で日本語能力検定N5ないしN4をパスして、日本の受入れ先会社の面接もパス、そこまで来て、送り出し機関の言うとおりに書かなかったらどうなるかは想像つきますよね?
技能実習生については、法務省の統計によると、2022年6月末の登録されている技能実習生の数は、327,689人となっており、実際に当NPOだけでも年間130件もの相談がありますが、これは氷山の一角であると考えています。賃金の問題だけでなく、パワハラ・暴力を受けたり、十分な安全対策や安全教育を受けずに危険な作業に従事させられるなど何らかの救援が必要な過酷な環境下にあるわけです。集計では、2010年から2017年の8年間で、実習生の方が174人亡くなっている事実もあります。もちろん事故だけでなく病気や自殺での死亡も含まれますが、実習生は年齢制限があり、20代の健康で体力のある若い方がほとんどであることを考えれば、多いのではないでしょうか?
作業中の事故で死亡まで行かなくても、大けがを負うなどは、それよりもっと多く発生していると考えられますが、そのような時、後遺症・障害が出て働くことに支障が出れば、日本国内であれば労災や生活保護などでなんとか暮らしていくことは可能ですが、彼らが母国に帰ったら、どうなるでしょうか?安くて使い捨て出来る消耗品?
当NPO法人ではそのような精神的にも肉体的にも過酷な環境に置かれた技能実習生をはじめとする外国人労働者の相談を行い、必要に応じて経営者に改善を要望したり、関係各所に実習先の変更を働きかけたりする支援を行うとともに、パワハラや暴力等の緊急時には必要に応じて、救出したり状況が安定するまでの間シェルターで保護すると言った活動も行っております。
皆様に、是非、この問題に関して関心を持っていただき、問題に直面している実習生の皆さんへの支援をはじめ、国際化社会での相互理解(実習生の方が日本の文化と日本の方が実習生の出身国の文化を相互に理解いただく事)が一層深まればよりよい社会へとつながるのではないかと思います。